古代においても、もはや打つべき手がない病状の場合でも、肉親は、優しいいたわりの言葉をかけながら、回復を祈って懸命な看護をしていたにちがいありません。
けれども、それを職業としての「看護」の始まりと呼ぶには、あまりに不完全でしょう。
紀元前三〇〇〇~四〇〇〇年ごろの昔、メソポタミア南部に、最初の古代都市国家であるウルが誕生します。
初めて穀物栽培の技術を見つけ出し、繁栄した国家です。
文明が開け、文字も生まれました。
粘土に刻まれた懊形文字は、いまではかなり解読できます。
エジプトにも王朝が出現します。
インダスにも都市文明が開けます。
文明が成立するところには、当然、医術も発達します。
権力は、専制支配の象徴として最高神を創りました。
神は王を補い、その絶対性を保障しました。
神ですから、病気を治す力も持っていました。
人間を不幸にするもの、個々の病気は、悪役であり悪魔です。
最高神は、王の背後にいて、これをやっつけるわけです。
宮廷には、専属の医師や医師の養成所もあったようです。