記録に見るかぎり、病気を治すことを専門につかさどる神が現われるのは、古代エジプトのナイル文明(紀元前三〇〇〇年ごろ以降)と古代中国の黄河文明(紀元前一五〇〇年ごろ)です。
エジプトの医神は、トートとイモテープ。
トートは、鳥(トキ)の頭と、人または猿のからだをした不思議な神です。
イモテープは神格化された実在した人物だということです。
中国の医神は、「神農」と呼ばれました。
頭に牛のような角を生やした姿。
農業の神様でもあったのです。
同時に博打の神様でもあって、農業に不可欠だった易を人間に教えたといいますから、愉快な神様です。
紀元前九〇〇年ごろ、古代ギリシャの都市国家が誕生します。
ギリシャのアスクレビオス神殿は、病人を治療するための保養所、病院だったようです。
ギリシャ人が病気になったとき、いちばん頼りにされたのは、この神殿での"お籠もり治療"でした。
アスクレビオスとは、ギリシャ神話の医術の神様です。
長い髭を伸ばし、いつも蛇が巻きついた杖を手にした老人の姿をしています。