太陽神アポロの息子である医神アスクレビオスの一族

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ギリシャ神話を読むと、当時のギリシャ人の世界観がうかがい知れます。

太陽神アポロの息子である医神アスクレビオスの一族は、みんな医療に関係していた神様のようです。

奥さんのエピオネは、鎮静・鎮痛の神ですし、二人の息子も医神で、ポダイレイオスは内科医、マカオンは外科医です。

娘たちも医神です。

ヒギエアは健康・衛生の女神、イアソとパナケイアは、万能治療の女神です。

これらの一家の係累は、そのまま当時の、そして今日の医学の構造と分業を表わしているように思えます。

私は、とくに奥さんのエピオネと、ヒギエア、イアソ、パナケイアの姉妹の女神たちに、専門看護師のルーツを見るような、胸のときめく思いがするのです。

医神の名をつけたアスクレビオス神殿は、ギリシャの各地で遺跡として見つかっています。

最盛期には、ギリシャ全土に400か所もの神殿が建てられたといいますから驚きです。

エーゲ海に浮かぶ小さな島々と小さな半島。

ここに花開いた古代都市国家の市民の共同体意識と、(奴隷制の上に成り立ったとはいえ)市民の対話が生み出した医療。

ここで、その治療や保養が行われていたことは明らかです。

まさに病院の原型です。

残念ながら、ここで病人の看護がどのように行われていたのか、詳しいことはわかりません。

でも、病人を収容した病院であるからには、看護が存在したはずです。

あるいは直接患者に接する医師が、治療と看護をあわせて行っていたのかもしれません。

これらの神殿を舞台にして、古代の医聖ヒポクラテスは、自分の医学の体系を形づくっていったのでしょう。