紀元前3~4世紀のローマ時代の始まり。
この時代には、ヴェレトウジナリウムという名の施設があったといわれます。
でも、これは軍隊用の負傷者収容院です。
タベルネ・メディカエという診療所もあったそうですが、これもお金持ちの階級のための施設でした。
ローマ時代初期には弾圧され迫害されていたキリスト教が、三一三年に公認されます。
以来、キリスト教は積極的に慈善事業を繰り広げます。
当然、布教の目的もあったことでしょう。
このときの慈善施設が、「ホスピタル」と呼ばれたのです。
今日、病院のことを英語でホスピタルといいますが、その語源は、ラテン語のホスペス、つまり"お客さん"という意味です。
当時のホスピタルは、医療といっても医師や専門家がいたわけではなく、ただ貧しい病人や障害者、孤独な老人、巡礼者や旅人のめんどうをみる程度のものだったそうです。
世話や介護に当たったのは、寺院の修道女たちでした。
いずれにしても、今日の病院とは、かなりおもむきがちがいます。
中世ヨーロッパで、まがりなりにも治療や医療が行われていたところといえば、それは王侯貴族の館と、わずかに修道院ぐらいだったのです。
古代や中世の社会では、基本的には弱者はどこまでも弱者であり、病人は、忌みきらわれる余計者であり、制裁を加えるべき悪者でした。