近代への序曲となったルネッサンス。宗教から科学へ。ルネッサンスは科学の扉をも開きました。
この時期、コペルニクスが「地動説」を唱え、ヴェサリウスが「人体解剖学」を発表します。
キリスト教の慈善精神にもとついて中世に誕生した「宿泊所」「ホスピタル」が、医療を行う場となり始めたのは一八世紀、それが病院的な性格を持つようになるのは一九世紀になってからのことです。
ここでようやく、ホスピタルが病院になったのです。
しかし、施設に入院している患者の看護の分野は、まだ未確立のままでした。
むしろ、病院ができて、医師たちが「個々の患者を見るのでなく、個々の病気を見る」ことに関心を寄せ、新しい医学を追究する傾向が強まりました。
こうなると、いきおい人間としての病人は軽視されます。
したがって、18、19世紀を「看護の暗黒時代」と呼ぶ学者もいます。
イギリスの名門の家の娘であるフローレンス・ナイチンゲールは、1820年に生まれました。
当時のイギリスは、"ビクトリアの黄金時代"と呼ばれ、イギリスが史上最大の繁栄を謳歌していた時代です。
いち早く産業革命を完成し、七つの海を股にかけて各地に植民地を得て、世界の商品市場を手中におさめていました。