ナイチンゲールは近代的な看護師という女性の専門的職業としての社会的地位を打ち立てた人でした。
もちろん、彼女がどんなにすぐれた女性だったとしても、その出身と肩書きをフルに活用しなければ、政界や財界、貴族らを動かすことも、その抱負を実現することも不可能だったにちがいありません。
その出身階層と肩書き、教養と見識を時代に即応して存分に生かした女性として、私はナイチンゲールに脱帽します。
ナイチンゲールについての、さまざまな評価はありますが、やはり私は「近代看護を築いた人」という呼称がふさわしいと思います。
そのころ、スイス人、アンリ・デュナン(一八二八~一九一〇年)が、敵味方を越えてすべての戦傷者を救護する国際的機関をつくることを提唱しました。
一八五九年のイタリア・オーストリア戦争を目撃し、四万人もの死傷者を目のあたりにし、そのあまりの悲惨さに衝撃を受けたのです。
一八六三年、彼の熱心な計画は、スイス、フランス、イギリス、オーストリア、スペインなど一六か国の支援を得るにいたります。
ついに翌一八六四年、一二か国が調印して「ジュネーブ条約」が結ばれました。
「国際赤十字社」の誕生です。