日本の社会では、女性は、つい五〇年前までは、自由に好きな職業につく権利さえ持っていなかった、ということを押さえておきたかったのです。
家業や農業、家政婦、あるいは国家によって命令された軍事生産などの徴用や動員以外は、女は家の中で子どもを守って家事をするものという風潮が一般的でした。
その意味で、女教師、看護師、お産婆さんなどは、特別だったといえるかもしれません。
それも普通は独身時代だけで、結婚すれば仕事はやめ、家事に専念するのが当たり前になっていました。
今日のように、主婦が仕事を持ち、勤めに出るなんて珍しいことでした。
あえてそれを続けようとすれば、姑や親戚、ご近所など、内外の批判や冷たい目を覚悟しなければならなかったでしょう。
長くわが国では、女性には選挙権はおろか、基本的人権さえ存在しませんでした。
家や夫のいいつけどおり家庭を守り、子どもを育てることが、女の役割でした。
妻のほうからは離婚を申し立てる権利さえありませんでした。
夫からは一方的に離婚を通告できました。
それでも、戦前の日本の多くの先輩女性たちは自立を求め、社会的職業につこうと努力してきました。